アートメンチ.com

アートについて悩んだあげく ダメになっていくブログ。

真夜中の暴露大会


トレイシー・エミン Tracey Emin
1963年生、イギリス出身


トレイシー・エミン、彼女の作品の主題は、トレイシー・エミンになる事だ。
Public Persona、公的な人格・仮面としてのアーティスト・トレイシー・エミンを
彼女は次々と発表していく。

しかも、その見せ方と言ったら、
今まで寝た事のある(夢や妄想の中であっても可)男性の名前を
テントの中にズラッーと書きならべてあり、見る者はそのテント、
彼女の秘密の空間とも感じる事の出来る空間で、彼女に関係した男性の名前、
その中には有名人もあり、それを見て我々は、共感したり、ドン引きする事もあるかも知れないが、彼女の事を知っていく。




その他にも、彼女自身のベッドとその周りにあるものを、そのまま持ってきて
展示した、という作品。そこには、下着やたばこだけでなく、コンドームやタンポンなども乱雑に置かれていて、もう自分自身の暴露を見せつけられるのである。



ショッキングでもあり、しかし、その話題性により、彼女はどんどん
メディアに進出して、より有名に彼女のトレイシー・エミンという人格も鮮明になっていく。
彼女が作品やメディアで話す、レイプや妊娠中絶から猫や旅行の話まで
見る者は彼女の全てを知らされていく。

“all is revealed. What remains unknown about Emin?”

“全ては晒される。エミンについて知らない事は残っているのだろうか”
 
Reference/参照
 
全てを暴露する事によって、作られたトレイシー・エミンという人格は鮮明になるにつれ、
本当のトレイシー・エミン自身の事ははどんどん隠れていく。
 
それが彼女のねらいなのだろうか。
 
 
例えば、ムンクと言えば、「叫び」という作品のあの顔が思い浮かぶと思うが、
エミンの自身のエミン像というのもそれと変わりはない。
見る者は彼女のつらい経験からの現在のセレブリティに成り上がった彼女の仮面に
そして、その仮面の下には悲しみや寂しさの悲鳴が上がっているのかも知れない。
と、彼女を読み解こうとする。
 
ナルシズム的な作品は孤独だ。
 
最後に、この彼女の作品はアートなのだろうかという疑問があがるかも知れないが、
この様に答える事もできる。
 
“this is art because she is an artist.”

“これはアートだ、なぜなら、彼女はアーティストなのだから。”
 
この逆説的な回答もまた彼女のカリスマ性により
リアリティを持つ。