孔があったら覗きたい
桑原弘明 Hiroaki Kuwabara
1957年生
桑原弘明はスコープが付いた綺麗な箱を作る。
スコープってあの望遠鏡の見る所。それを覗くと、中には
ミクロコスモ(小宇宙)の風景が広がっている。
“僕は物を小さくすると魅力が増すような気がして仕方がないんです。
それと僕にとっては重さがすごく大事。
ある程度重くて小さくて魅力ある固まりみたいなものを作りたいと思っている.”
reference/参照
(http://www.gallery-tsubaki.jp/interview/061209a/index.html)
画像参照(http://www.edogawa-art.jp/scope/index.html)
真鍮で出来た綺麗な箱はそれだけで存在感があり、
僕は持った事触れた事はないが、適度に重さがあるらしい。
そして、スコープを覗くと幻想世界がそこにある。
椅子、テーブル、窓がある部屋の中に、
髑髏やバイオリンや壁掛けの絵画が妖しげに置かれている。
その箱の中の部屋は、箱に取り付けられた数個ある穴から
懐中電灯か何かで、箱の外から光を順次あてる事で、
中に差す光の光量が変化して、
朝から昼間、そして夜へと時間の変化があったり、
壁掛けの絵画が透けて何かが浮き出たり、
しかけがある。
この箱の中に広がる世界は、もちろん触れる事は出来ない。
箱を開けて中の物をつついたりは、作品を破壊しない限りできない。
あるのにさわれない、スコープで覗くと言う体験には、
潜在的にそのような意味があるような気がする
盗視のような感覚。
箱の中のそれを盗視するとは、どういう意味だろう。
先に使ったミクロコスモ(小宇宙)という言葉は、
マクロコスモ(大宇宙)の反意語であり、宇宙という意味の反意語である。
ということは、ミクロコスモとはともすれば人間という意味合いも持つ。
箱はそう、頭蓋骨なのかも知れない。
脳の中をスコープで盗視するような感覚。
見ていいのかな。なんて躊躇があるくらいで覗きたい。