アートメンチ.com

アートについて悩んだあげく ダメになっていくブログ。

そうだ旅させよう。

 
サイモン・スターリング Simon Starling
1967年生 イギリス出身
 

簡単に説明すると、彼の作品はリサーチをベースにしたアートである。
どういう感じかというと、
 
彼の作品「Shedboatshed」
というタイトルは、
どう訳しても、[小屋ボート小屋]
って事になる。
 



これを簡単に説明すると、川のほとりにおんぼろの小屋を発見したスターリングは
その小屋、そして、その場所の歴史を調べつつ、
小屋発見時に小屋のトビラの上に船を漕ぐ為のオールがオブジェとして取り付けられてあるのに目をつけ、
「ははーん、ボート屋とか、船、川好きの人が建てたか住んでたんだなぁ。
この小屋にはそういう想いといか想いでというかそんな目に見えない願望があるなぁ。
だば、
この子(小屋)を解体してボートにして、川を下り、川下の美術館に運び、
そこでまた小屋として再建設して、この子(小屋)の願望を成就させよう。」
とかなんとか、そんな事に近い計画を立てたと思うのだが、
 
そうこうして、美術館に小屋が元のままの姿で立った。
これはその小屋がオンボロになるまで川上に立っていた時間と
一時、ボートに変形して、川を移動したという事実と
美術館内に建つまでの膨大なリサーチの時間と
全てがもうスターリングという作家の手を経る事によって
一つの歴史としてあぶり出されボートになるという新しい歴史を付加され
作品にまでなったというのが面白いのだ。
歴史的な事実やエピソードの研究から、過去と未来を繋げる作業というと
しっくりくるのだろうか。

 


 
スターリング自身は彼の作品をこう説明する。
 
”‘the physical manifestation of a thought process’,
 revealing hidden histories and relationships.”
 
”「隠された歴史や関係性を暴く思考のプロセスの物質的な明示である」”
 
Reference/参照
 
明らかにされていなかった事実にスポットを当て、
リサーチした事をビジュアル的に表した作品なのである。
リサーチを文章などでなく、作品で明示しているのである。
 
そして、僕が感じるこの作家の面白さは、
もちろん過去から未来へという時間的な移動のほかに
この小屋がした空間的物理的にも移動、
いわば旅をしたという事がより事実を強化しているなぁと思うのである。
そう思うとやはり、小屋が立っていて正解なのだ。


 
確かに、
美術館に来て、小屋だけがあり、
横にある数行の説明をみただけでは彼の作品はわかりづらいのかも知れない。
が、
彼の作品の鑑賞とは、彼のリサーチから暴かれ、展開された旅を感じる事であり、
旅のゴールについた作品だけをみて、
「小屋だなぁ。」
と素直になっていては
”ムズカシイ”となってしまうのかも知れない。
 
 
  

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